2024年度 第77回 児童生徒生物研究発表大会の開催のお知らせ

各位

千葉県生物学会会長 西田治文

千葉県生物学会自然活動普及部

 

2024年度 第77回児童生徒生物研究発表大会の開催のお知らせ

 

各位におかれましてはご健勝にてお過ごしのことと存じます。千葉県生物学会主催の児童生徒生物研究発表大会を今年度で77回目を迎えることになりました。発表大会を下記の通りに開催します。小中高生の皆さん、日ごろの研究活動の成果を是非とも発表していただきたいと思います。多数の方のご参加をお待ち致しております。

 

 

1. 日時:2024年11月23日(土曜日・勤労感謝の日) 午前10時~午後3時

2. 会場:千葉県立中央博物館講堂

3. 主催:千葉県生物学会

4. 後援 申請予定:千葉県教育委員会・千葉市教育委員会

5. 発表内容:生物に関するもの、生物を材料に研究したものであれば結構です。

       内容のレベルは問いません。未完成のものでも構いません。

6. 発表の申し込み:10月10日(木曜日)までに次の①~⑥のことを、7の申し込み先にご連絡ください。

 ①発表の題名(題名の変更のないようにお願いします)

 ②発表者(共同の場合は全員を記入、名前にふりがなを付記ください)

 ③学校名・部活の場合は部名称・学年

 ④連絡先(住所・電話番号・FAX・Eメールなど)

 ⑤発表の内容要旨

  (400字程度当日会場で発表要旨集を配布します。また、後日、学会誌にも要旨と講評を載せます。)

 ⑥発表に使用される視聴覚機材

  (当日の申し出では9-③以外は準備できない場合がありますので、申し込み時に連絡ください)。

7. 参加申し込み先:鶴岡邦雄メール ar3k-trok <at> asahi-net.or.jp

 参加申し込みは上記のメールで行います。誤送信や申込み漏れを防止するために、申し込みされたことを鶴岡邦雄にご連絡ください。

 携帯番号 080-1173-9783 FAX 0475-35-3159

8. 発表の受付について

 千葉県内にある学校、または千葉県内に居住している児童生徒を優先して受付します。

 千葉県以外の方は仮受付をし、発表数に余裕がある場合に発表していただきます。

 発表の可否は、締め切り後に千葉県生物学会自然活動普及部から連絡致します。

9. その他
 ①発表時間は発表数により調整致します。質問を含めて約15分を予定しています。
  11月にプログラムと発表者への諸連絡を送りますので、ご確認ください。

 ②当日、配布資料がある場合は100部ほど準備いただき、会場入口の机上に置いてください。

 ③会場で準備する視聴覚機材は、液晶プロジェクター、windows2010PCです。

  パワーポイントを使用される方は、不具合の防止のためノートパソコンを当日持参ください。

  特に、Mac使用の方、動画等特殊なソフトを使用される方はパソコンを持参ください。

 ④参加申し込みに関する質問等は申し込み先の鶴岡に電話かFAXでお願いいたします。

 ⑤発表を視聴される方の申し込みは不要です。直接、会場へお越しください。

  発表会場への入場料は無料です。なお、博物館の展示室の見学は入場料が必要です。 

 ⑥新型コロナの影響で、発表大会を形を変えて開催する場合ややむなく中止することがあります。

  当学会のホームページに載せますのでご確認ください。

                                                            以上

2024年度 第77回 児童生徒生物研究発表大会 プログラム

(第521例会)

日時 2024年11月23日(土曜日)10時~15時

場所 千葉県立中央博物館 講堂(千葉市中央区)

主催 千葉県生物学会

後援 千葉県教育委員会・千葉市教育委員会

 

10:00~10:15 開会挨拶 諸連絡

 

1. 10:15 - 10:30 カナヘビのかんさつ日記 パート3

 千葉市立桜木小学校 3年 濵本佳吾

2. 10:32 - 10:47 光に集まる昆虫達

 市川学園生物部 2年 清水康輔

 

 (5分休憩)

 

3. 10:52 - 11:07 クロオオアリ初期コロニーの観察

 市川学園生物部 3年 薄井小太朗・脇陽嘉・吉田修

4. 11:09 - 11:29 セミの羽化場所について

 市川学園生物部 3年 遠山敬梧・高野ひなた

 

 (午前の部の表彰と講評・13:00まで昼休み)

 

5. 13:00 - 1315 イソギンチャクの駆除!!

 千葉県立市原八幡高等学校理科部 1年 横山琴音・香曾我部陽里

6. 13:17 - 13:32 プラナリアの記憶能力

 千葉県立国府台高等学校生物部 2年 中井翼・市山到・岩﨑謙吾・辻龍太郎・木下雄仁

7. 13:34 - 13:49 安房地域における猛禽類繁殖調査と生態系モニタリングの取り組み

 千葉県立安房高等学校生物部 2年 渡邊治・1年 大石夏鈴・伊藤悠

 

 (13:55まで休息)

 

8. 13:55 - 14:10 ウミホタルはどこにいる? ~ウミホタルの季節回遊行動の調査~

 千葉県立安房高等学校生物部 2年 唐尼稜太・瀧口優衣・1年 今井理緒

9. 14:12 - 14:27 アマモ復活への挑戦Ⅲ~未来への芽を育む~

 千葉県立安房高等学校生物部 2年 鈴木陽仁・1年 安西里環

10. 14:29 - 14:44 市街地に残る水辺、緑地環境の鳥類相と生態系

 千葉県立柏中央高等学校科学部 2年 折笠瑞季

 

 (午後の部の表彰と講評・閉会)

 

以上

 

2024年度 第77回 児童生徒生物研究発表大会 発表要旨

1. カナヘビのかんさつ日記 パート3

 千葉市立桜木小学校 3年 濵本佳吾 

 

1年生から継続して行っているカナヘビの研究。今年は以下の視点について検証した。

1・2年時から研究している「①カナヘビの越冬」,「②なつき度比べ」,「③卵の孵化」について。そして,今年度の研究から検証した,カナヘビは私たち人間と同じように「④相性の良い・悪いがあるのか」「⑤学習能力はあるのか」の全5項目だ。

研究を通して,越冬させるためには水分や温度管理が大切だということ。カナヘビの生育度や飼育年数,個体差によってなつき具合が変わること。卵の孵化には卵を乾燥させないことが重要であり,産卵の前後の天候は雨の日が多いことが新たにわかった。また,13匹の個体での検証実験を通して,カナヘビも人間と同様に相性や学習能力があることがわかった。

今年度は,1個の卵の孵化に成功することができたが,ほとんどの卵は孵化させることができなかった。次年度は,卵を確実に孵化させるための必要条件について研究をしていきたい。

 

 

2. 光に集まる昆虫達 

 市川学園生物部 2年 清水康輔 

 

なぜ虫が光に集まるのか。昆虫は光に集まる正の光走性を持つものがいるが,生得的な行動の他に,視覚や周辺環境による影響はないのだろうか,疑問に思った。

本研究では,ライトトラップを仕掛ける地上からの高さによって,光に集まる昆虫の種類は変わるかを調査した。調査期間は2024年7月23日,8月10日,9月8日の3日間,時刻は日没後の19時~21時,調査地は,山間部(山梨界八ヶ岳周辺),田園地帯(千葉県佐倉市周辺),住宅街の公園(千葉県千葉市周辺)の3カ所とした。ライトトラップはブルーライト(波長385~410nm)を光源とし,その下に設置した箱に飛来した昆虫を生きたまま捕獲できるボックストラップを使用した。ライトトラップは低い位置(1mほど)と高い位置(5mほど)の高さに設置した。

調査結果は,光源の高さで集まる昆虫の種類数は地域によって異なるが,月の見え方で集まる昆虫の種類,数ともに明らかな差は見られなかった。低い位置では,木の根元から登ってきたと思われるアリが集まっていた。

昆虫が多く生息する場所では,よく見える位置に設置したライトトラップに昆虫が多く集まると考えられたが,月齢によって結果に差はあまり認められなかった。

 

 

3. クロオオアリ初期コロニーの観察

 市川学園生物部 3年 薄井小太朗・脇陽嘉・吉田修

 

2024年5月〜6月にかけて,クロオオアリの新女王3匹を相次いで採集することができた。3匹の新女王をそれぞれ別々のコロニーで飼育する中で,いくつかの興味深い行動やコロニーによる差が観察できたため,それらについて比較検討を行った。

本研究では,2つのプラスチックタッパー容器を居住区と餌場とし,それぞれをPVCチューブで繋いだ飼育槽A, Bと,PVCチューブを使わず直接容器を繋いだ飼育槽Cを用意した。飼育槽B,Cの居住区の底に石膏を敷いた。それぞれ新女王は採集から約1か月後には産卵し,新女王を頂点にしたコロニーが形成された。

コロニーを観察する中で興味深い行動の一つ目は,チューブを通る際の経路だ。それぞれのコロニーで,複数のアリがチューブの中へ入る際,同じ回り道を通っていた。他のアリが残したフェロモンを介して,先に進んだアリが通った回り道を通っていた。

二つ目は,エサの食いつきの変化である。あるコロニーでは,同じエサを与え続けると,そのうちのエサへの食いつきが悪くなり,全く減っていないことがあった。これは,栄養分の偏りを防ぐためだと考えられた。

三つ目は巣穴を塞ぐ行為が見られた。複数のコロニーで削った石膏を用いて,チューブや巣を塞いだり,巣穴を狭くしたりする行動を観察された。これは,クロオオアリが乾燥に弱いため,乾燥を防いで湿度を保っていると思われた。

3匹の新女王を突然飼育することになったため,別々のコロニーで飼育する条件を十二分に合わせることができなかったが,今後は上記の興味深い行動だけでなく,冬眠の条件などについても,調査を進める予定である。

 

 

4. セミの羽化場所について

 市川学園生物部 3年 遠山敬梧・高野ひなた

 

2022年から市川学園内でセミの抜け殻を採集し調査を続けてきた。2022年は市川学園内のセミの生息状況の把握,2023年はセミと植物の関係について調査を行った。調査を続けていく中で,セミの幼虫が羽化をする場所の地面からの高さと個体の大きさに関連性があることに気がついたため,2024年は抜け殻のついていた植物と地面からの高さ,抜け殻の大きさ,種類,性別を比較し,セミの抜け殻がついていた場所から,セミがどのような場所を羽化場所として好んでいるかを考察した。

セミの抜け殻の大きさが3.3cm以上の個体は,おもに地面から1 mより上の高さで抜け殻が多く見つかっていた。大きい幼虫ほど高い場所まで登っていることから,大きな幼虫ほど体力があり,より天敵から襲われにくい場所で羽化していると考えられた。また,セミの抜け殻はカツラやトウネズミモチなど比較的葉の面積が広い場所についていたことから,セミの幼虫は葉の面積がより広く,安定する場所を好んで羽化していると思われた。

2022年から2024年までのデータから,セミの種類別の割合がどのように変化しているのかを比較し,市川学園周辺の環境の変化なども考察した。

 

 

5. イソギンチャクの駆除!!

 千葉県立市原八幡高等学校理科部 1年 横山琴音・香曽我部陽里

 

本校で飼育中のセイタカイソギンチャクの生態について調べると,検索候補には駆除,厄介者などとあまりいい印象がない言葉が多く,原因として水槽からの駆除が大変であるという事に気がついた。駆除が難しい理由は,回復能力や繁殖力がとても強いため,すぐに復活したり数が増えたりしてしまうからである。そのため家で手軽に駆除できる方法を調べた。

まず,家の中にある調味料や洗剤を,小分けにしたイソギンチャクのカップ(塩水45mlに調味料を5ml)に入れ1週間置き観察し,死亡と判断したあとはまた一週間置き再繁殖が起こらないか観察する。並行して,イソギンチャクの分裂についても調べた。医療用のハサミやナイフで切って数週間放置して様子を観察した。切り方を色々変えて,体軸に対して縦・横に切ったり,2等分・3等分に切ったりするなどの様々な条件を試している。現在実験・観察の途中であり,魚や環境に大きな影響や害を与えずにイソギンチャクを駆除できるようにしたいと考えている。

 

 

6.プラナリアの記憶能力

 千葉県立国府台高等学校生物部 2年 中井翼・市山到・岩﨑謙吾・辻龍太郎・木下雄仁

 

プラナリアに同じ迷路をひたすら繰り返しゴールさせ,回数を重ねるとタイム

は短くなるのか,また切断後に同じことをするとどうなるのか調査します。

 

 

7. 安房地域における猛禽類繁殖調査と生態系モニタリングの取り組み

 千葉県立安房高等学校生物部 2年 渡邊治・1年 大石夏鈴・伊藤悠

 

猛禽類は食物連鎖の頂点に立つアンブレラ種であり,環境改変の影響を受けやすい生物である。特にサシバは里山環境に依存した生態を持ち,環境の指標生物となる。安房地域では猛禽類の調査が行われた実例がなく現在どのくらい繁殖をしているのかわからないため調査を行っている。私たちは,昨年より安房地域の猛禽類調査を行っている。

今年は調査対象種をオオタカ,サシバ,ハチクマの3種に増やし行った。サシバについて34地点で調査を行い,営巣確認2地点,営巣を行っている可能性が高い地点(以下「推定営巣地点」)が10地点確認できた。オオタカについて6地点で調査を行い,営巣確認1地点,推定営巣2地点が見つかった。ハチクマについて2地点で調査を行い,推定営巣1地点がみつかった。

また今年から,サシバが生態系の指標生物であることを確認する目的で,営巣地点付近の総合的な生物調査も開始した。まずは昆虫調査から始め,今後は生態系全体の評価を進める予定である。これにより地域の自然資源の価値を示し,環境保全の重要性を強調していく。

 

 

8.ウミホタルはどこにいる?〜ウミホタルの季節回遊行動の調査〜

 千葉県立安房高等学校生物部 2年 唐尼稜太・瀧口優衣・1年 今井理緒

 

館山湾はウミホタルの生息地として知られており,私たちは生物部の活動として毎年ウミホタル採集を行っている。冬になると採取できなくなると考えていたが「海蛍の光」(1994 阿部勝巳)によるとウミホタルは通年で採取できるとあり,冬は深場に移動するとあった。

館山には夕日桟橋という400mある桟橋があり,季節によって移動する様子を観察できると考えた。約40m間隔で10ポイントを設定し,同時に採取して各地点で採取量を計測した。採取したウミホタルは,ガーゼで濾し取り,乾燥させ,目視で数えた。5月から9月まで合計6回行い,海の表面水温,天候,個体数を記録した。

8月のみ,深い方がウミホタルが多く採取でき,それ以外では浅い所に多かった。また,浅い所で採れるウミホタルは小さい個体が多く,深い方は大きい個体が多い傾向にみられる。これはウミホタルが成長度合いによって棲み分けしている可能性を示唆している可能性がある。

 

 

9. アマモ復活への挑戦Ⅲ〜未来への芽を育む〜

 千葉県立安房高等学校生物部 2年 鈴木陽仁・1年 安西里環

 

千葉県館山市沖ノ島にあった自然豊かなアマモ場は,現在消失してしまった。また,東京湾全域でも同様に藻場が減少傾向にある。私たち安房高校生物部は2022年度より豊かな生態系を築くアマモ場の復活を目指して活動を始めた。

研究活動として①生物相調査②アマモ栽培方法の研究を行なっている。生物調査ではアマモ場が再生した際,生態系がどのように変化するかを知ることを目的として,海の中の環境や状況の把握のため環境DNAや地引網などでの採取調査を行なった。

アマモ場がない沖ノ島では,全体的な魚種数とアマモ場を利用する魚種数ともに,アマモ場のある他2地点より少なかった。アマモの栽培研究では2023年度に水槽でのアマモ栽培を試み,約1700株の栽培に成功した。栽培した株は館山湾の那古海岸へ植栽し,経過観察を行った。本年度は冷却装置を使用し,水槽内での通年栽培を試みている。

さらに,南房総市立富山学園中等部と共同でのアマモの再生活動を始め,活動の一環として富山学園中等部への出前授業を行った。

 

 

10. 市街地に残る水辺,緑地環境の鳥類相と生態系

 千葉県立柏中央高等学校科学部 2年 折笠瑞季

 

柏市は県内でも都市化が進行している地域として知られているが,本校の近くには大堀川を中心に良好な自然が残されている。今回の研究では,大堀川の松ヶ崎地区の鳥類相について2023年8月下旬~2024年8月下旬までの期間に調査を行った。特に観察時には,鳥の食性や出現場所などに注目するように努めた。

調査の結果,53種類の鳥が確認され,比較的,鳥類相が豊かであることが明らかになった。自然環境に恵まれた手賀沼周辺域の鳥類相データとの比較も行った。水辺と緑地があり,植生や土地利用に多様性があるため,様々な餌を対象とする鳥が訪れていることがわかった。 

夏休みには地元の小学生を対象に科学部が行った科学教室(松葉一小,松葉二小,柏市中央公民館)で,大堀川の鳥類についての話をした。また,この地域の鳥類のパンフレット(A3両面刷)を作成し,本校のミニ集会では地域の方に配付した。

 

 

『千葉県いきものかんさつガイド』表紙
2018年2月刊行の千葉県生物学会70周年記念出版『千葉県いきもの かんさつガイド』(たけしま出版)の表紙